イキイキと働く社員が会社の技術革新と成長を支えるチカラになる
<会社データ>
本社所在地 :東京都台東区浅草橋1-22-16 ヒューリック浅草橋ビル
創業・設立 :1954年9月(東証スタンダード上場)
代表者 :木村 有仁
従業員数 :956名(2024年3月現在)
事業内容 :感光材・化成品の開発製造販売、化学品ロジスティック事業
URL :https://www.toyogosei.co.jp/
<インタビューイー>
東洋合成工業株式会社 執行役員 人材総務部長 水戸 智氏
2011年入社。
社員約1000名の人事、採用、人材開発、組織開発、労務管理、総務をわずか16名のスタッフで担う部門長。
事業拡大は続き、毎年約100名の採用をコンスタントに行っています。
東洋合成工業の創業は1954年。医薬品用化学製品の製造・精製からはじまりました。時代の変遷の中で直面した困難を乗り越えるために磨いてきた蒸留精製・化学反応技術に強みを持っています。さらに、1970年代から半導体製造に欠かせない感光材に着目し、次世代の需要を狙い研究開発を行うことで、感光材マーケットで世界トップシェアを獲得しています。
昨今の世界的な半導体需要の拡大に伴い、この10年で売上が約3倍、営業利益で約3倍に伸び、社員数も3倍に拡大しています。平均年齢36歳と製造業の中でもとても若く、勢いがあります。また、先進的な取り組みが評価され、内閣官房が主催する
“第3回三位一体労働市場分科会”
でも活動が報告されています。
この取り組みを主導してきた人事部門の責任者 水戸智さんは、
「変化の激しい時代、これまでに通用した経験は通用しない。何のためにやるのか、一人ひとりの在り方が問われる時代になった」
と語ります。
恐れを超え、自分の弱さを認めることの力
10年で社員数300人から1000人と倍になり、平均年齢は36歳に
弊社は、この数年の半導体市場の好景気の中、非常に今、ビジネスチャンスを掴んでいます。人事・総務の責任者として、人と組織の両輪から、成長に貢献するミッションに関わり、また、システムコーチしての役割も担い、活動しています。
私が働きだした頃は、やらなければならないことが決まっていて、課題も上司や先輩が与えてくれました。それらを確実にこなすことで、会社が成長し、良い経験を自然と積むことができました。しかし、今の変化の激しい時代、やらなければならないことは簡単に定めきれません。そのため、何をやるかよりも、何のためにやるのか、さらにどうありたいかが問われています。それに応えるためには、個人・組織の視点が必要になってくるのです。その個人・組織にアプローチできる方法として、システムコーチング®︎を導入しました
※システムコーチングとは?
CRR Global Japanが運営するORSC(Organization Relationship System Coaching): 組織の関係性を一つのシステムとして捉えてコーチングする手法です。これは、システムの関係性(システムの例:チーム、カップル、家族など)における相互作用やダイナミクスを理解し、改善するためのコーチングアプローチです。
若手から聞こえてきた悲鳴
コーチングに出会う前、目の前の問題解決に奔走されていました。例えば、必要な人数を採用する、制度を作る、会社の成長に必要な取り組みをおこなっていました。しかし、施策がバラバラで効果に疑問を持ち始めたのが、今から5、6年前です。
その頃から、中長期的に成長していくための組織開発の視点を取り入れ、それらを実践するプロセスを構築したいと考えていました。その時には、上層部が決めたものをただ実行するのではなく、新入社員から職場全員で、自分たちがこうしたい、その一人ひとりの想い・願いを大事にして、主体性を発揮できる機会を作っていきたいと考えていました。
その施策の一つ、組織状態を測る「組織感情診断®︎」を導入しました。すると、その中の一項目、エンゲージメントが上がらないことが課題として浮き上がってきたのです。
実際に現場の若手から、
「自分がやりたいことにチャレンジできない」
「やりたいことがよくわからない」
「成長する機会がない」
仕事が楽しくないという悲鳴にもとれる声が聞こえてきたのです。そんな時に自分事化するとはどういうことなのかを考え始めました。
組織感情診断とは?
株式会社ジェイフィールが運営するエンゲージメントサーベイで、組織内の従業員の感情や意識を理解し、組織全体の健康状態やパフォーマンスに関する洞察を得るための手法です。
自分がもっと楽しく仕事がしたい、イキイキ働きたい
そんな若手の悩みを耳にしながら、自分も同じように悩んでいました。何にドキドキ、ワクワクするのか、どんな場面で生き生きするのか、よくわからなくなっていたのです。そんな時に、友人のパーソナルコーチがサポートしてくれました。
その時の大きな気づきとして、自分がやりたいことは何なのか、どうありたいのか、内省し整理していくこと、また、自分が持つ劣等感や弱さを認め、受け入れるプロセスの重要性を感じたのです。
その経験がきっかけで、若手にも、他の社員にも届けられるように、職場環境を整えていきたい、そんな想いが強くなっていきました。
何より、自分に向き合った時に、自分自身が
『もっと楽しく仕事がしたい、もっとイキイキ働きたい』
そんな想いに気付いたことが大きな転機となりました。これをきっかけに、前例のないものでも積極的に取り入れ、環境を変えることに全力で向かい始めました。それから、自然と仲間との関係、同僚や部下との関係も変わっていったと思います。
パーソナルコーチングとは?
個人の成長や目標達成を支援するためのコーチングの形態です。個人が自己啓発や目標達成、問題解決、キャリアの進展、バランスの取れた生活を実現するために、コーチとの一対一の対話やセッションを通じてサポートを受けます。
一人ひとりに合わせたカカワリカタ
個から元気になる人、チームが元気になるから自分も元気になる人
これまでの経験を通じて、自分のやりたいことは何なのか、どうありたいのか、という軸をちゃんと内省して整理をしていくというプロセスがとても重要だと学びました。それらを実現するためには、個人の視点のパーソナルコーチング、組織という視点のシステムコーチング、さらに人事制度などの環境整備が必要だと考えています。
ただ、そのカカワリカタにおいて、個人から関係性を作ってチームが元気になることもあれば、チームの関係性が良くなり、個人が元気になることもある、それは、個人もチームの一員であり、一人ひとり、その人が必要なタイミングが異なるからこそ、この両方の視点を持つことが大事だと思っています。
欲張るより一人ひとりの自分らしさを探す
これまで色々な施策を打ってきました。まず何から始めるかと問われたら、色々なことに欲張って手を出すより、シンプルに自分らしさを探すことの重要性に焦点を当てることだと思います。これは、自分自身がパーソナルコーチングを受け、自分の想い・願いに気付いたことがきっかけです。
その自分自身の想い・願いが会社に貢献できることに気づいたとき、はじめて自分にOKが出せたように思います。
ただそこに気がついても、そんな簡単には行動にはつながりません。また、継続の難しさも感じでいました。そんな時にFINd YOUr COMPASsのプログラムと出会ったのです。そして、見つけた自分自身のMY COMPASS【人生の羅針盤】は、私が活動する上での指針となり、大きな存在となりました。
積み上げてきた経験が次の施策の想い・願いにつながる
コーチングを受ける前、私は、劣等感がある人間で、よく思われたいとか、自分の弱さに向き合うことができませんでした。そのため、自分が何とか全部やらないといけないという変な責任感、プライドがありました。それに、割と突っ走るタイプで、振り返ると仲間との距離ができていたと思います。さらに、ある限界が来ると体調を崩すような働き方でした。また、その時の仲間から、言葉には出てこないけれども、仕方なく関わってくれているような空気感を常に感じていました。
私の想い・願いは、
『みんなで何かを成し遂げて、美味しいお酒を飲みたい』
ただ、それだけでした。でも、その想い・願いは伝わらず、何か施策を達成した後、ちょっとした寂しさがいつもありました。
一方で、自分のことはよくわかっているつもりでした。しかし、パーソナルコーチングを受け、また、自分が大切にしていることを言葉にする中で、本当の自分を分かっていなかったことに気がつきました。特にコーチングでは、自分の弱さ、エゴ、自信のなさ、人とのカカワリの中での遠慮など、自分が認められない、認めたくない部分と向き合い続けました。
その結果、それらのエゴや自分の弱さも、ちょっと可愛く感じるというか、なにか認めてあげようという風に思えたのです。その中でも、一番大きなことは、自分の弱さを受け入れることができたことだと思います。
それからは、周囲の人とのカカワリカタも変わり、これまでのように何かカッコつけて、自分を繕うこともせず、仮面を外せるようになったと思います。そうすると、仲間から自然体になったよね、なんて声もかけられるようになりました。
このように、自分と向き合い、自分が大切にしているもの、自分がどうありたいのかをしっかりと考えることで、私自身が、仕事が楽しく、生きるのが楽になった、この経験を一人でも多くの人に味わってほしいという想いに変わっていったのです。この経験を活かして、役職、年齢に関わらず、その想い・願いを実現するサポートを社員のみなさんに提供していきたいと考えています。
自分の意思を示すことの無限の力
人生の羅針盤を自分の言葉で定義する大切さ
FINd YOUr COPMPASsとパーソナルコーチングとの大きな違いは最終的に言葉にしていくことだと思います。また、上辺の綺麗な言葉を残すのではないことが印象的でした。
また、自分が大事にしていることを言葉にする過程で、これまでの様々なキャリアの変遷、人生での出来事、その時々の気持ちを、丁寧に話を聴き、進められていくこと、また、自分で想像していなかった、表現の言葉が出てきて驚きました。
受ける前、その人の匂いを感じない、人間臭さを感じない言葉が出てくると考えていたのかもしれません。しかし、出来上がってきた一つ一つの言葉には、過去の経験、その時のシチュエーション、感情、五感で感じたものが全部繋がっていました。それらの言葉、一つひとつが集まった一つの結晶となり、その結晶が自分そのものと思えたのです。
自分が大切にしていることが構造化されました。しかし、ただ無機質にロジカルに整理されたわけではなく、自分自身の感覚、経験が重なっていて、すごく自分の大切な一部が込められていくことを感じていました。
ロジカルに綺麗に何か、導き出されたものではないからこそ、自分が本当に伝えたいこと、本当に大切にしていることが形作られた気持ちです。
信頼できる場づくり、徹底的に実現するまでのカカワリ
MY COMPASSのフォトスタンドを自宅の家の机の上に、また、スマホの待受にして、日常の中で、いつも見ていました。また、社内での集会や研修、講演の中での自己紹介で、大切にしていることを説明する時に使っています。
作ってから3年。今では、自然に体現できるようになっている気がします。
MY COMPASSをつくり、言語化したことで、改めて、一人で何か情熱を持ってやるということではなく、仲間やチームでやりたいという自分の意志を確認でき、行動に迷いがなくなりました。その結果、自分がリードするだけではなく。共に考えて、共にプロセスを踏むようになっていると思います。
具体的にいうと、役員、マネージャー、コーチとしての役割の帽子をかぶり変えながら、カカワリカタを自覚的に選択できるようなってきたと思います。
これまでの経験から日常で意識することができる仕組みがあること。もう一つ重要な点として、初めて参加するメンバーの個性をしっかりと受け止めてくれる安心安全な場、自分らしくリラックスして臨めること、その場をどう作ってくれるのかが重要だと思っています。その場のつくり方に絶対的な信頼をおいています。
その上で、会社を離れた自然の中で、想いがある人たちと対話をし、言葉を紡ぎながら出てきた価値観、その体験からつかんだ感覚をしっかりと言語化までしてくれる、このようなプログラムは他にはないと思っています。
やりたいことが会社の貢献につながる
これまで参加してくれたメンバーのほとんどが、自分らしく仕事を楽しむようになっています。
すでに与えられた役割の中で、よりその仕事を楽しもうという人もいれば、次のやりたいことが見つかってチャレンジしている人もいます。それはやはり自分の価値観から、素直に行動に移すようになっているからだと思います。
具体的には、製造現場のチームにいたが、人材開発をしたいと自ら手を挙げて異動してくれた人、安全に関する業務推進をしていて、より自分らしく、いいチームへの関わりをしたいという気持ちから、自らシステムコーチングを学びにいき、より活動がダイナミックになった人、エンジニアとしての技術をさらにより良いものにするために、一緒に働く人たちとのカカワリカタを考えるようになった人がいます。
また、そのメンバーからは、まず貴重な機会を作ってくれたことへの感謝の言葉とともに、あんなに自分のことをしっかりと考える時間は今までなかったというような言葉をもらっています。さらに言語化されたMY COMPASSが、一つの指針となっているといるなんて言葉も聞こえてきています。
勇気づける合言葉は『仕事楽しもうぜ』
自分らしく、仕事を楽しむ姿がチームの元気を生む
本当に仕事が、自分事になっていることが大きな変化です。だからこそ、任された仕事でも、自分事化できる感覚を持ってくれています。同じ仕事をするにも、自分がどうありたいか、どうやりたいのか、MY COMPASSで言葉にした自分の指針を軸にして、自覚的に行動するようになり、より楽しめるようになっているからだと思います。
この体験したことを、現場でぜひ広げていってほしいです。シンプルに言うと、
『一緒に仕事楽しもうぜ』
こんな気持ちを伝えていってもらいたいです。
やらされ感からの成長より、やりたいこと、在り方が問われる時代
やはり一人ひとりが輝く場所があって、集合体として、イキイキしている、自分のやりたいことを信頼できる仲間とできる、会社と自分の成長が繋がっていくサイクルが回ったなら、持続的に成長ができると考えています。
すごくシンプルなのですが、これが会社にとって一番大事なこと。これらができてこその結果が、業績であって、その順番を間違えてはいけないと思います。
今、経営での最重要課題が人材育成です。人材育成は、できないことをできるようにする技能教育も重要ですが、その人の個性や強みを活かす機会や場を作ることが人材育成の始まりだと考えています。その人のありたい姿、行きたいところに進むために必要なサポートができる制度や環境整備と共に、そのためのカカワリとして、役員、マネージャー、そして、人材総務、HRBP(Human Relationship Business Partner ※一般的には Resourceですが、Relationshipという思いがあります。)のカカワリカタが肝になると考えています。
ものづくりの現場から、イキイキと社員が働くモデルを共に作りましょう
私は、メーカーをわたり歩いてきたので、ものづくりの現場が好きで、日本のメーカーから元気になっていくことが一つの大きな夢です。これは、私たちの会社だけでなく、日本のものづくりに携わる中堅中小企業が元気になることが一番の近道だと思っています。
そして、大事なことは、そんな想い・願いを持った一人の想いからチームが変わっていくと考えています。そういう人たちが出会い、一緒に組織、会社、社会、さらには世界を変えていくような流れが生まれてきたら嬉しいです。
頑張るよりも、本当にシンプルに、自分らしさっていうものを大事にして、
『人生楽しんじゃおう』
そんな気持ちを持って、まず自分から、人にカカワリ、実践することが、より良い組織をつくることにつながると信じています。ぜひ、一緒にものづくりの現場から日本を元気に、そして、現場の一人ひとりを元気にしていきましょう。
まとめ
インタビューを通じて、役割を超えて、ひとりの人として、自分とのカカワリからスタートし、さらに自分の弱さと向き合い続けてきたこと。組織の問題を人ごとにするのではなく、自分事化し、時に先頭にたち、時に仲間として、共に近道を選ぶのではなく、遠回りしても、その先にこそ、道がひらけると信じて活動されてきたことを感じました。
また、組織風土改革や人材育成に近道なしと、面倒臭いことを面倒として、外部に投げるのではなく、率先して学び、自らが実践者となり、現場の一人ひとりと向き合うことを大切にしているからこそ、現場や仲間からの信頼が得られ、自然と輝いているのだと思います。
また、プログラムで時間を共にした仲間からも水戸さんへの感謝の言葉、信頼がとても伝わってきたことを今でも覚えています。
今回、インタビューをさせていただいたことで、なぜ、出会うひとり一人の社員が輝いているのか、その理由に確信がもてました。
私も、ひとりのエンジニアとして、コーチとして、一緒にものづくりの現場から、一人ひとりを共に元気にしていきたい、そんな想いがより強くなりました。
貴重な時間をありがとうございました。これからも共に現場から元気にしていきましょう。